【本】人口減少社会の未来学

 

将来がどうなるかという予測は難しいものですが、人口動態予測は比較的確度が高いと言われています。

本書では人口減少社会について、10人の識者が様々な切り口で考察を行なっています。

 

 

気になったデータを紹介しておきます。

2010年→2015年に東京都で約36万人増えた人口のうち、3人に2人にあたる23万人は、75歳以上の増加である 。残る3人に1人は65~74歳の増加であり、64歳以下の人口は3万人減っている 。 

そうなのですね。不動産投資の根拠として首都圏は人口が増加していることが挙げられたりしますが、その実、高齢者が急増しているのであれば投資判断も変わってくるのではないでしょうか。

また、高齢者の数は医療福祉負担に直結します。医療福祉負担が高い都市は住みやすいのでしょうか。自身が高齢化したときに、どこに住むのがいいのか考えさせられます。

 

次に出生数の推移です。

30歳から39歳までの女性においては、やはり出生数は増加ないしは横ばい 傾向を示している。著しく減少しているのは、20歳から24歳まで、25歳 から30歳までの女性だけである。厚生労働省の調べによれば、1950年の 女性の平均初婚年齢は23.0歳。1985年では、25.5歳に上昇し、2010年には 28.8歳にまで上昇している。ちなみに、2015年の平均初婚年齢は夫が 31.1歳、妻が29.4歳。

有配偶者における出生率は下がっていないどころか、むしろ上がっているそうです。母親の年齢別の出生数でみると、30代では横ばい、20代で激減していることから、少子化の原因は晩婚化であると明言されています。

晩婚化の原因は家族形態の変化や、労働市場との関連もあると思います。個人の選択のことであり、一概に晩婚化自体が問題であるとは言えませんし。

とすると、少子化の根本的な解消は困難ですね。 

 

この他にも本書には、人類史から考える人口動態の考察や、AI時代と絡めて付加価値の高い知識産業を押し進めるべきという主張、イギリスの実情からみる縮小社会の殺伐とした描写など興味深いトピックが多数あります。

 

ひとつひとつは長くないので、非常に読みやすいです。

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